夏の漆仕事の困りごと_その1
こんにちは。いろいろとバタバタしていたら、またもや時が流れてしまいました。
まだ梅雨が明けきらず、雨だったり晴れだったりと不安定な天気が続いていますね。
(漆には暑さは大敵なので、個人的には雨の日は涼しくてうれしかったりはするのですが…)
漆風呂も暑い日は部屋のエアコンをつけないと、蒸し風呂になってしまうのですが、ここ数日涼しい日は、エアコンいらずの日もあり快適です。(私は冷房に弱く、冷えるとお腹が壊れてしまうのでとても辛いです)
暑かったり湿度が高すぎると、漆は表面的にはすぐ乾いているように見えるときがありますが、表面的に乾いてはいても、その下は乾いていないことが往々にしてあります。そして、たいがい表面の早く乾いたところと、乾いていないところが引っ張り合うような形で、特に黒漆等塗った際は写真の様な表面に「縮み」が出来ることがあります。
この状態になってしまうと、表面だけ乾いていて、中はいわば乾いていない”レア状態”なので、爪で押さえると柔らかく感じるかと思います。
多分特にこの時期、この状態にきっとぶち当たる方が何人もいらっしゃるのでは?
さあ、この状態になったら、どうしたらよいでしょうか。
続きはまた次回…
金継教室_第二期・四回目が開催されました
本日は町田のうつわももふくさんでの金継教室、4回目でした。
(前回、三回目の記事を書きそびれたまま四回目になってしまいました…汗)
今日は筆に黒漆をつけて描く作業のデビュー。
筆を動かす練習として、アクリル板に各々選んだ絵柄を描いていただきました。
漆は絵の具や墨などと違って粘度が高く、筆の使い方が違います。
皆さん初めてのことでしたが、集中して写経のごとく取り組んでくださいました。
最初はどうしても厚塗りになりがちですが、慣れると薄く描けるようになるので、練習あるのみ!です。(漆を筆につける作業があるたびに、定盤の上で筆でまっすぐ線や曲線を描く練習をするのがおすすめです。私も一時期良く練習していました)
漆が厚塗りになってしまうと縮んだり、粉を蒔いたりする時に金粉などが沈み続けたりする原因になります。それ故に薄く描くことが大事になってきます。
ちなみに、アクリル板は漆と相性が良いので、好きな絵柄を描いて漆風呂に入れて乾かせば、小さな漆絵の作品が出来上がります。練習にもなるし、作品にもなって一石二鳥。是非お試しください。
旅のはなしー岐阜&愛知編
ご無沙汰しております。
ブログを書いていないうちに、梅雨が来て、もう夏が目の前に来ています。
さて、先日とある調べもの&探しものをしたくて、「これは現地に行った方が早いのでは…?」と思い、弾丸で岐阜県多治見市と愛知県常滑市に行ってまいりました。
岐阜は大学3年の時、高山に一人旅をして以来、愛知に関しては人生で初めて下車しました。初めて乗る電車に年甲斐もなくドキドキして、電車が止まるたびに何駅か確認して、落ち着かず。おかげで中央本線でも(油断すると長野方面へ行く恐怖)、名鉄線でも(油断すると中部国際空港に行く恐怖)無事乗り間違いなどもなく、到着できました。
(東京では油断して乗り間違いをする時がたまにありますが、旅先では不思議とないのです。未だに東京駅で迷子になるときありますし…苦笑)
初めて降りた多治見の街は、もちろん器のお店や工房はたくさんあるのですが、住宅地とおぼしき場所でも、よーく見るとそこかしこに陶器の街である要素が見え隠れしていました。普通のお宅かと思いきや、器の型が山積みになっていたり、奥の方からなにか機械が回っている音がすると思って覗いてみると、器をひいている姿が見えたり。産業が街に根付いているのをよく伺い知ることが出来ました。
思いがけない嬉しい出会いがあったり、見たいものも見ることが出来て満足しましたが、蛭子さんが出演しているバスのローカル線の旅を地で行くようなハプニング(5km先までバスがない…など。ぞっとしました)が途中あったり、若干珍道中となりました。
ネットでいろいろと調べられる時代ですが、やはり実際に自分でその土地に行って目で見て、体感することで得られるものは違うな、とひしひしと感じました。…ですが、歩きすぎたのと疲れで筋肉痛が治まりません。。
猛暑の中歩かないで、あの時素直にタクシーを呼べばよかった…と今更後悔しております。もしくは次回はレンタカーかな…。
あまりにもせわしない旅だったので、時間を見つけて再訪したいと思っています。
材料についてのはなし_粉もの編
本日は材料についてのお話を。
金継をする時、漆以外にも色んな材料を使いますが、結構粉ものが多いです。
例えば、錆などに使う砥の粉や地の粉だったり、色漆を作る顔料だったり。あとは私は使わないのですが、接着の際に麦漆を使う方は、小麦粉を使います。
見た目、かなり地味ーな材料ですが、実はこの粉たち、結構重要なのです。
産地によって様子が全然違ったりしますし、粒子の細かさなど、ちゃんと吟味して選んで使う必要があります。特に漆が産業としてある場所には、その土地で取れるものを使っていることが多いです(一番有名なのは、石川県輪島市で採れ、輪島塗の下地に使われる「輪島地の粉」ですね)
漆に混ぜて練ったりする時も色々とコツがあって、油断すると、作業してる時は一見大丈夫そうでも、後々その影響がじわじわと出てきたりします。
「下地の練りだから、見えないところだし適当に混ざってればいいや…」とか、「漆になんとなく色がついてきたからいいや…」とか、妥協は許されないのです。
(故にいつも作業をしていると、心の中で漆のことを大先生と呼びたくなります…)
たかが粉、されど粉。油断は禁物です。
漆をやっている人には当たり前のような材料たちですが、一から金継を始める方には、材料を買いそろえるのはきっと大変なことだと思います。
材料は出来るだけ見て確かめて購入するか、難しければきちんとお店の方に詳しく確認した上での購入、もしくは一気に大量に買わないで、少量買ってみて試してみることをおすすめします(特に砥の粉などはkg単位での販売だったりするので、もしやりたい工程の材料にそぐわないものだった場合、きっと処分に困りますのでご注意くださいね)
金継教室_第二期・二回目が開催されました
本日、町田のうつわももふくさんでの金継教室の第二期・二回目が開催されました。
雨とともに激しく風が吹き、嵐のような天気の中、ご参加下さった皆様、本当にありがとうございました(帰るころには雨だけは止んでいましたが…)
今日の課題は欠けているところの固めと、割れの接着。
欠けは漆をテレピンで薄めたものを塗りました。
割れは糊漆用のご飯を時間をかけて地道に練って頂き、生漆と混ぜて、ドキドキの接着作業。
特に接着の作業は、糊の作り方から、糊漆の塗り方、接着の仕方など、マニュアル本には書いていないし、伝わってこない細かーいコツがいろいろとあります。
今回が漆を使った初めての作業でしたが、実際やってみて頂いて、皆さん口々に金継ってこんなに大変なんですね…としみじみ仰っていました。
金継はここ数年でテレビや雑誌などでも度々紹介されたりして、かなり言葉や概要はご存知の方も増えてきました。
ただ、そういったメディアで見聞きして、なんとなく知っているつもりでも、やはり実際やってみないと分からないことって、往々にしてありますよね。自分の目で実際に見たり触れたり、自分の体で体験してみるということは、とても大事だと思います。
便利な時代である今の時代、情報もたくさん入ってきますし、知りたいことはすぐ調べられるので、知ったかぶりになってしまいがちです。
ことわざで言う「百聞は一見に如かず」ですね。私自身、大切にしていることの一つです。
次回はまた1か月後。
接着した部分を整える作業と、欠けの部分を埋めるコクソ作りに入ります。
旅のはなし。
ただいまゴールデンウィーク真っ只中。最大10連休もお休みされる方もいらっしゃるそうなので、国内や海外へ旅行されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
お預かりした器のご紹介_銀継
本日もお預かりしておりました器のご紹介です。
とても爽やかな青いお色のお皿を、サイズ違いで3点お預かりしました。
いずれもお皿の縁が欠けており、欠けた部分をコクソ(漆で作ったパテのようなもの)で補てんして、最終的に銀粉を蒔いて、磨いて仕上げました。
これからの季節の食卓にとっても映えそうですし、銀が嫌味にならずアクセントになり、とても素敵に仕上がりました。
とても使ってみたいけど、残念ながらお客様のものなので、近々手元から旅立っていきます。なので、頭の中で妄想して我慢します…いつものことですが(笑)
*写真の器の仕上げ:銀継
お預かりした器のご紹介_金継
先日仕上がった、預かりものの器のご紹介です。
小さめの小鉢の縁が浅めに大きく裏も表も欠けていたところを、金継で仕上げました。
大きめに欠けていたので、コクソ(漆で作ったパテのようなもの)で埋めて行くのに時間がかかってしまいました。金は磨いて仕上げてあるので、本金ならではの重厚感が感じられると思います。
青みがかった器なので、通常は、比較的銀継をご依頼されることが多いですし、また自分としても提案することが多いのですが、今回のご依頼で金も素敵だな…と再認識させられました。
銀継ももちろんシャープで格好良い感じで素敵ですが、ちゃんとした金継で仕上げた器は、銀で仕上げるのとは一味違って、なんとなく器の格が一段上がり、品が生まれる感じがします。
*写真の器の仕上げ:金継
作業をしながら。
突然ですが、皆さんは何か作業をしているとき何も音がない、無音の方が良い人ですか?それとも、何か音楽等かかっていた方が良い人ですか?
私は何か音がないと落ち着かず、無音の「シーン…」という状態が逆に気になってしまうので、部屋で何か作業をするときにはラジオをよくかけています。
おそらく大学の工房だったり、昔の職場でよくラジオ(大体J-WAVE)がかかっていたことが多かったことも影響していると思います。
先日とあるテレビで、師匠が弟子の作業の音で上達具合を見るために、工房の中は無音にしている、という映像を見ました。確かに作業をするときの音は、その人の技術の良し悪しが必然的に出てくると思います。
大工さんなら、木に鉋をかけるときの音や釘打ちの音。
コックさんなら、野菜を刻む包丁の音。
私の部屋には師匠はおりませんが、自分の作業を客観的に見つめるためにも、これからは無音に少しづつ慣れていこうかな…と思う今日この頃です。
金継教室_第二期・一回目が開催されました
本日、町田のうつわももふくさんでの金継教室の第二期・一回目が開催されました。
第二期は前回と異なり、全員女性で女子会のような雰囲気でした。金継のワークショップに参加されたことがある方が今回もいらっしゃいましたが、ワークショップで教えてもらったのは新うるしを使ったものだったり、はたまた、本漆での金継のはずがすぐに取れてしまったとのことで、ちゃんと金継をやってみたいとのことでご参加されたとのことでした。
今回は細かい作業に使えるヘラを作っていただきました。金継はもちろん、漆を扱うということは道具作りがとても大事なのです。
私はヘラは全てヒノキなどの木を塗師刀という刃の長い刀で削って作っていますが、それはなかなかハードルが高いので、今回は竹でちょっとした作業に使える小さいヘラを小刀で削ったり、やすりをかけて複数作っていただきました。
他の金継教室だと、いかに怪我をしないかという理由でこういった刃物を使う作業を避けるところもあるようですが、金継に限らず、自分で道具を作る体験というのはとても大事だと私は思っています。
自分で手を動かして道具が作れると、自分なりに創意工夫して、より自分なりのやり方が発見出来ていくことにつながります。
次回はいよいよ漆を使った作業に入っていきます。また開催の模様をお知らせしますね。