作業をしながら。

突然ですが、皆さんは何か作業をしているとき何も音がない、無音の方が良い人ですか?それとも、何か音楽等かかっていた方が良い人ですか?

私は何か音がないと落ち着かず、無音の「シーン…」という状態が逆に気になってしまうので、部屋で何か作業をするときにはラジオをよくかけています。

おそらく大学の工房だったり、昔の職場でよくラジオ(大体J-WAVE)がかかっていたことが多かったことも影響していると思います。

先日とあるテレビで、師匠が弟子の作業の音で上達具合を見るために、工房の中は無音にしている、という映像を見ました。確かに作業をするときの音は、その人の技術の良し悪しが必然的に出てくると思います。

大工さんなら、木に鉋をかけるときの音や釘打ちの音。

コックさんなら、野菜を刻む包丁の音。

私の部屋には師匠はおりませんが、自分の作業を客観的に見つめるためにも、これからは無音に少しづつ慣れていこうかな…と思う今日この頃です。

金継教室_第二期・一回目が開催されました

本日、町田のうつわももふくさんでの金継教室の第二期・一回目が開催されました。

第二期は前回と異なり、全員女性で女子会のような雰囲気でした。金継のワークショップに参加されたことがある方が今回もいらっしゃいましたが、ワークショップで教えてもらったのは新うるしを使ったものだったり、はたまた、本漆での金継のはずがすぐに取れてしまったとのことで、ちゃんと金継をやってみたいとのことでご参加されたとのことでした。

今回は細かい作業に使えるヘラを作っていただきました。金継はもちろん、漆を扱うということは道具作りがとても大事なのです。

私はヘラは全てヒノキなどの木を塗師刀という刃の長い刀で削って作っていますが、それはなかなかハードルが高いので、今回は竹でちょっとした作業に使える小さいヘラを小刀で削ったり、やすりをかけて複数作っていただきました。

他の金継教室だと、いかに怪我をしないかという理由でこういった刃物を使う作業を避けるところもあるようですが、金継に限らず、自分で道具を作る体験というのはとても大事だと私は思っています。

自分で手を動かして道具が作れると、自分なりに創意工夫して、より自分なりのやり方が発見出来ていくことにつながります。

次回はいよいよ漆を使った作業に入っていきます。また開催の模様をお知らせしますね。

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新緑の季節…

もう4月も半ばにさしかかり大分暖かくなってきて、随分と春めいてきましたね。

お花見もそろそろ終盤になり、新緑の時期へと移り変わっていくこの時期。

桜は勿論きれいなのですが、個人的にはこれからの新緑の季節がとても好きです。

私の住む町を囲む山という山から、目に眩しいくらいの生命の息吹を感じて、「あー、今年も春が来たなあ…」と実感するのです。

そしてここ数年、ただ緑を遠くから見ているだけではなく、山に登って肌で緑を感じることが多くなっています。より近くで緑を味わいながら登るのは、筋肉痛というお土産が後追いでやってきたりもしますが(笑)、とても気持ちが良いものです。

去年はこの時期に大学時代の友人に誘われて、奥多摩の高水三山へ行きました。山道を登っていたかと思ったら、断崖絶壁が現れたり、変化に富んだコースで楽しめました。高尾山よりももうちょっとちゃんと山登りをしたいな、という方にはおすすめです。

さあ、今年はどの山に登ろうかな…?

金継の仕上げいろいろの参考例_その3

金継の仕上げのいろいろの続きその3、今回は漆継(うるしつぎ)のお話しです。

仕上げに金や銀を蒔かずに、漆を塗った状態で終わらせる方法です。

金継した器は金や銀を蒔かなくても、特に問題はありません。普通に使えます。

尚、漆にはいろいろな色があり、黒、ベンガラ、朱、黄色…たくさんあります。

顔料を混ぜればいろいろな色は作れますが、ベースに漆の茶色い色がありますので、絵の具のようにきれいな色にはならず、少し茶がかかった落ち着いた色になります。

最初は落ち着いた色ですが、年数を経ると徐々に漆の色が透けて、色が明るくなっていきます。漆って不思議ですね。

ちなみに写真の小皿の仕上げは、お皿の柄に合わせて赤い漆で仕上げてあります。

金で仕上げるのがいいなと思っていても、必ずしもすべての器に金が合うとは限らず、それぞれの器に合った仕上げがあります。

お悩みの方はお気軽にご相談くださいね。

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*写真の器の仕上げ:漆継(朱)

 

金継の仕上げいろいろの参考例_その2

ここ最近、連続して金継以外の話が続いてしまいましたが、久々金継のお話を。

今回は以前も少しお話しした金継のいろいろな仕上げのお話の続きです。

こちらの写真の器の仕上げは、本漆と銀粉で仕上げた「銀継(ぎんつぎ)」です。

工程は金継と同じく、銀粉を蒔いて、その上に薄く漆を何度か塗っては磨いて、を繰り返すことで仕上げていきます。金継とは違って、シャープできりっとした雰囲気になりますので、磁器のものなどカッチリした雰囲気の器に合います。

時間が経つにつれ、銀の部分が少しづつ黒くなっていきますが、それも味わいになります。(※磨けばまた艶を出すことは可能です。ただし、銀粉で仕上げてあり、元々本漆を塗り重ねて仕上げてあるものに限ります)

金継というと、「金」のイメージが強いですが、それ以外の選択肢もいろいろありますので、お気軽にご相談くださいね。

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*写真の器の仕上げ:銀継

急須でお茶を入れられない子がいるのを知っていますか?

先日とあるお茶屋さんの方と話していた中で、話題になったことがありました。それは「今のお子さんに急須でお茶を入れられない子がいる」ということ。なぜそのようなことが起きるか、想像がつきますでしょうか。

それは、親が使っていない=家にないからです。きっと親御さんはお茶を飲むときはティーバッグなどを使っていて、急須の必要性がないから持っていない方が多いのかもしれません。

ティーバッグのお茶も決して不味いわけではないですが、やはり急須で淹れたお茶は、急須の中できちんと茶葉が開くことで、茶葉から余すことなくおいしさが抽出されていて、その味わいは別物です。

また、急須でお茶を淹れる行為は、ティーバッグを湯呑に入れてただお湯を注ぐより、たった一杯のお茶でも、そのお茶に「奥行き」を感じるような気がしてなりません。

実際、先日友人と喫茶店に入って温かいウーロン茶を注文したのですが、まさかのティーバッグで登場し、ちょっとがっかりしました…。お茶を淹れる行為も含めて、そのお茶の味を構成しているように思います。

前回話題にさせて頂いた、日本のものづくりに対してもそうですが、あらゆる部分で昔から日本に根付いていたはずの文化もかなり衰退しているのを感じる今日この頃です。

日本のものづくりを次世代につなげるために大切なこと

このところ、日本のものづくりが特集されているテレビ番組や雑誌の特集などよく見かけるようになりました。往々にして緻密で丁寧な仕事の数々。メディアで取り上げられ、その影響でもてはやされるものもある反面、現実はとても厳しい産業も多く、後継者がいなかったり、色々な問題で追い込まれてしまっているのも多いのです。

器や工芸品、着物など…今の時代まだいいものの良さを知っていて購入され、使っている大人たちがいらっしゃいますが、はたして、私と同世代の30代、はたまたもっと若い人たちが、親世代の年になった時、そういったものを買うだろうか…ものづくりは消費してくれる人がいないと成り立たないので、それを考えると先々がとても怖くなります。

質にこだわらなければ安価でいろいろなものが手に入る昨今。ただ、あらゆるものに対して、やはりある程度は安かろう悪かろうであり、そのものの質に値段は反映されていると思います。

ものを見てただ「高い!」と思うだけではなくて、なぜそれがその値段になっているのか考えてみる。興味がわけば、普段ファッションや美容にお金をかけている人は、買おうと思っていたあのコートや、ネイルは我慢して、はたまグルメにお金をかけている人は、あの素敵なディナーのフルコースを1回我慢して、思い切って買って使ってみる。

そして、そのものを作った人の手仕事を体感して味わってみる。前回の漆器の話ではないですが、きっと得るものがたくさんあるはずです。

特にお子さんがいらっしゃる方は、そういったものを自分たち(親)が使っていると、ゆくゆくお子さん世代に伝わり、その良さを知っているお子さんの世代から更に次世代につながっていくのです。そういった思考や価値観を今の人たちにもっと培ってもらえたらなと強く思います。

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*写真の器の仕上げ:溜塗

お味噌汁、お椀で飲んでいますか?

今回は金継ぎの話ではなく、漆器のお話を。

先日、会話をしていた中で話題になったことで驚いたことがありました。

お味噌汁をお椀ではなく、陶器の器で飲んでいる人が結構いるという話。私は漆のお椀でないと、なんとなくお味噌汁がおいしいと思えないので、とてもびっくりしました。家で食事をする際、子供の頃からお味噌汁を入れるのは決まって漆か木のお椀でした。

お味噌汁が入った状態で陶器を手に持つととても熱く、また冷めやすいものですが、素地が木で出来ていて、漆が塗られているお椀は熱が外へ伝わりにくく、お味噌汁が熱くても持っていて陶器ほど熱くないですし、保温性があるため冷めにくいのです。また、口当たりも陶器よりも優しくまろやかなので、不思議と味もなんとなく触感の違いで印象が変わってきます。

いつも陶器でお味噌汁を飲んでしまうという方は、ぜひ漆のお椀を手に入れて、飲み比べてみてはいかがでしょうか。きっとその使い心地に魅せられ、もう陶器でお味噌汁を飲もうときっと思わなくなると思います。(※ちなみに漆のお椀は素地が木で、きちんと本漆が塗り重ねられたものを是非お求めくださいね!)

尚、現在4月からの生徒さんを募集しております、うつわ ももふくさんでの金継教室では、金継ぎの話だけではなく、こういった漆のお話などもさせて頂いておりますので、ご興味ある方は是非ご参加ください。(話が脱線しがち?との噂…笑)お申込みお待ちしております!

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<金継教室のご案内@うつわ ももふく>

<◎おかげさまで満席になりました。キャンセル待ち受け付けております(3/30)>

以前より金継教室を開催させて頂いております、町田のうつわももふくさんにて、新しい金継教室のご案内です。以前のクラスが全6回終了したため、あらたな第2期生の募集になります。

割れてしまったけど、捨てられない大事な器をお持ちでしたり、金継にご興味ございましたら、この春から金継を始めてみませんか。

漆での金継を月一回、半年間ほどかけてお教えします。初回は漆のお話など説明と、金継をするのに必要な道具つくりをして頂き、二回目以降は金継の作業を行います。毎月第二水曜日、全六回のコースになります。

今回の受講費は材料代込み、全6回で43,200円(税込み)です。(仕上げの際に金粉、銀粉等をご希望の場合は、別途費用がかかります。3000円〜)

■開催日時  (第2水曜日 13時〜15時ですが、だいたい延長して16時頃までやってます。)
1回目 4月13日(水) 13時〜15時
2回目 5月11日(水) 13時〜15時
3回目 6月8日(水) 13時〜15時
4回目 7月13日(水) 13時〜15時
5回目 9月14日(水) 13時〜15時
6回目 10月12日(水) 13時〜15時

※8月はお休みとなります。原則として振替はありません。

■場所:ももふく
■講師:天野志美(アマノシトミ)
■定員:6名 (最小催行人数3名←※催行確定しました)
■受講費:受講費43,200円(税込み、教材費込み、一括払い)
■参加資格 : 初心者の方、多少かじったことがある方 (同業者の方 はご遠慮ください)
■持ちもの:初回の説明会の際に、お直ししてみたい器の画像を写メなどでご持参ください。実物をお持ちいただいてもかまいません。お直しできる器の数はだいたい5客〜。器は工程により、お店でお預かりしたり、箱に入れてお持ち帰りいただくこともあるため、持ち帰ることが出来る大きさでご検討ください。
※壊れた器が無い、もしくはご用意が少ない場合は初回にご相談ください。(※足りない場合には器を用意します(300円〜調達したものを販売いたします))

お申し込みはももふくさんのホームページの「contact」から、もしくはメール(momofuku@momofuku.jp)宛てに、件名に「金継教室参加希望」として、以下をご記入の上お申し込みください。
・お名前・当日連絡のつくお電話番号・メールアドレス

※なお、漆はかぶれることがございます。まれに強いアレルギーをお持ちの場合もございます。漆のかぶれ等に関しまして医療保障等は負いかねますことをあらかじめご了承いただき、ご参加をご検討ください。

漆の話をはじめ、初歩の初歩から丁寧にお教えします。皆様のご参加お待ちしております。

金継の仕上げいろいろの参考例_その1

何個か前のブログで、金継はいろいろな仕上げがあることを少し説明させていただきました。Instagramにはちょこちょこ以前より載せてはいますが、あらためて…。

こちらの写真は読んで字のごとく、本漆と金粉で仕上げた「金継(きんつぎ)」です。

金粉を蒔いて、その上に薄く漆を何度か塗っては磨いて、を繰り返すことでこの光沢は出るのです。本金を使っていることもあり、なんとなく風格が出ているかと思います。

「金継」の仕上げも人によって「金粉」を使っていたり、「金消粉」を使っていたりしますが、その違いはあまりきちんと知られていない部分なのかなと思います。同じだと思っている人もいるかもしれません(※金粉と金消粉は別物ですよ!)…その話はまた追い追いさせていただきます。

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*金継のご依頼はa.mano4103@gmail.com、もしくは東京都港区の器屋さん、百福までお願いします*