金継ってどんなもの?

私が金継を始めた10年前、金継という言葉はあまり世間では知られていなかったように思います。博物館に収められている文化財や骨董屋さんなどで金継された器を見かけることはありましたが、今ほど雑誌に取り上げられたり、こんなに注目されることは無かったように思います。

周りの人に「金継をしている」というと、それって何のこと?と言われ、かくかくしかじか…説明が長くなることもしばしばでした。最近はそこまで説明しなくても大丈夫なことが多く、時代は変わったな…としみじみ感じています。

ただ、「金継」という言葉は知っていても、詳しいことは知らない人がまだまだ多いように感じています。金継された器を実際に見たり使ったりされたことがある人も、よっぽど興味がない限りいらっしゃらないのではないでしょうか。

金継は読んで字のごとく、「金」を使って仕上げることは勿論ですが、実は銀や錫などの他の金属や、はたまた黒い漆や色の漆などいろいろな仕上げが出来ます。必ずしも金色である必要はないのです。(※厳密に言うと、銀で直すと「銀継」、色漆で仕上げると「漆継」と言葉が変わります)

例えばシャープな雰囲気の磁器でしたら、金よりも銀で仕上げた方が恰好よく仕上がりますし、器の柄に赤い色が多用されていたら赤い漆で仕上げると馴染むなど、ひとつひとつの器に合う仕上げがあります。

また、金継をする際に接着剤を使用したり、主に釣具用に作られた有機溶剤の混ざった新うるしで直している方もいらっしゃいます。新うるしはほぼかぶれませんし、本漆と違って漆風呂にいれる手間がありませんので、気楽に誰でも取り組みやすいかと思います。いろいろな価値観がありますし、一概にはそれらがダメとは言いませんが、やはり口に触れる可能性がある器は本漆で直した方が安心ですし、きちんとした工程を経て、本漆で直したものは長く持つものなのです。

新うるしと本漆での直しの違いは、よっぽど金継に興味があったり、知識のある方でないと見分けがつかないかと思います。こればっかりは文字や写真で伝わるものではなくて、実際に見たり触れたり体験しないと分からない部分なので、文字にしながらとても心苦しい部分があります。

ご興味のある方は、現在は博物館や骨董市などだけでなく、飲食店などでも金継を見かけることもありますので、「これは新うるしの直しかな?本漆の直しかな?」と考えながら、金継された器に触れるのも楽しいかもしれません。

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*金継のご依頼はa.mano4103@gmail.com、もしくは東京都港区の器屋さん、百福までお願いします*